ナメラスジに建った廃診療所
どんな伝承か
取材班が和気郡吉永町の田倉牛神社を訪ね、牛神社の世話役で町の文化財保護委員を務める光友和夫氏に話を聞いた後のことである。同行した岩井志麻子がタクシーを待つあいだ、光友氏宅の筋向かいに建つ某診療所の前で待機していた。見れば診療所は閉鎖されて久しいらしく、内部は荒れ果てている。「ああ、そこはナメラスジですから」という光友氏のひと言に一同は凍りついた。ナメラスジとは魔物の通り道のことで、岡山ではその上に家を建てると決まって不幸や怪異に見舞われると恐れられている。事実その診療所も、以前に開業していた運送会社も、すぐに潰れてしまい、その後は借り手もないまま放置されているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。