産室をのぞかれて竜に戻った美滝姫
どんな伝承か
三石の深谷に木彦という若者が住み、山仕事で暮らしていた。ある春の日、大雨のなかを急いで帰る途中に倒れている美しい女を助け、家で介抱すると元気を取り戻し、美滝姫と名乗って二人は夫婦になった。身重になった姫は、産室に五日籠もるので決して見るなと言い置く。三日目の夜更け、大きな揺れに驚いた木彦がのぞくと、大きな竜が生まれたばかりの竜を抱いていた。気を失い、正気に返って部屋へ戻ると姫は男の赤子を抱いている。正体を見られてはもう人には戻れないと泣いた姫は、黒雲を呼んで大竜と小竜になり谷の奥へ走り去った。竜が登った岩の跡は滝となり、上を雄滝、下を女滝と呼ぶという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。