怪鳥の塚を囲む数方庭の踊り
どんな伝承か
長府の二ノ宮の夏祭には、数方庭(スホウデン)と呼ばれる名物の行事がある。旧暦七月七日から十三日まで毎夜、藩士も町家も幟や燈籠を出して、神殿の広庭で踊りまわる。幟は竿の先に鳥毛を差して小幟と鈴をつけ、燈籠は枝葉のある竹に掲げて短冊をつける。楽人が庭上の大石の上で太鼓を打ち、その石を中心に「ああよい」と呼ばわりながら踊るのである。この祭は神功皇后の三韓行に起こるともいい、大石は仲哀天皇が熊襲征伐の折に賊魁を斬って埋めた首塚だともいう。また、三韓の王の妄念が二間四方ほどの大鳥となって日本に渡り多くの人を蹴殺したので、正月十六日に住吉大明神がこれを射落として二ノ宮の庭で打ち殺し、地を七尺掘らせて埋めた。その怨念を鎮める祈禱が数方庭の起こりだとも伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。