平家を語った船に浮かぶ女の首
どんな伝承か
下関から豊前の内裏へ渡る海上一里の間では、しばしば妖怪に遭うと伝わる。船頭当蔵は客に平家一門の話を慎むよう頼んでいたが、ある年西国へ向かう侍たちがその話をすると、海上に女の首が幾十となく打ち乱れて浮かんだ。髪は蛇のようにのたうち、顔ばかり白く光っていたという。船頭が念仏を唱えると、女の首はやがて波間に沈んでいった。
原典より
もう一人の侍が海上はるかに、ふと目をやると、波のうえに白々と漂うものを見つけた。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。