同じ熱海の宿でセルの男を見た青年
どんな伝承か
熱海の旅館の離れで遠藤周作と三浦朱門が怪異に遭った翌年の二月末、深夜一時近くに遠藤の家の電話が鳴った。見知らぬ青年が震える声で、先週仲間と熱海へ行き、ひどく恐ろしいものに出会ったと話す。宿の場所を尋ねると、遠藤たちが決して誰にも明かさなかった、あの陰気な旅館の名を口にした。離れの中にセルを着た若い男が立っていたと聞いて、遠藤は歯が鳴りだし、急いで電話を切った。半月後には曽野綾子からも、知人が熱海で同じ目に遭い、調べると遠藤らの宿の隣家だったと知らされたという。
原典より
「それが詳しくは言えないんです。離れの中にセルを着た若い男がたっていたんです」—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。