泳ぎ寄る六人を煙管で払った漁師
どんな伝承か
平島での話に、江島の船が六、七年前の夏の夜、黒瀬の沖の長瀬へ水烏賊を捕りに出かけたことがある。そのうち南風が吹き雨が降り出したので帰ろうとすると、裸で「ヤァヤァヤァ」と言いながら泳いで来る者が六人もいた。それが船に噛りつくと船は動かなくなってしまった。漁師は驚いたが、静かに坐って煙草をのみ、煙管を舷に叩きつけると、その者たちは少し退いた。その間に急いで漕ぎ出したが、また同じように追って来て噛りつく。その都度煙草を呑んでは追い払い、ほうほうの体で家へ逃げ帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。