靄の晩に聞こえる岩の崩れる音
どんな伝承か
肥前の江ノ島でいうイシナゲンジョは、海姫や磯女などと同系らしいという。五月、靄の深い晩に漁をしていると、突然に岩が大きな音をして崩れ落ちるように聞こえる。ところが次の日そこへ行って見ても、何の変わったこともないという。柳田はこれを、夜分に路傍で石を投げるというシバカキや、砂をばらばらと振りかけて人を嚇すスナカケババなどと並べ、石や砂にまつわる音の怪の一つとして挙げている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。