甑島への海で磯と魚群に化けた船幽霊
どんな伝承か
松尾源吉は十二歳で船乗りになり、十四歳のとき一度だけ船幽霊に出会った。四丁櫓の船で甑島へ渡る途中、天草と甑島の中ほどまで漕いだころ、自分が漕ぐ先に磯が見えたので船頭に告げたが、そんな所に磯があるものかと取り合わず、そのまま乗り切らせた。すると磯は消え、今度はおびただしい魚の群れに出くわした。魚は鯔に見えたり太刀魚に見えたりした。船頭は構わず漕がせたが、暴れる魚の水が船頭にかかった。やっと甑島に着くと、船頭はそこで寝込み、ひどい熱病で一週間ほど患って死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。