願ほどきを怠ったカシキへの祟り
どんな伝承か
屋久島の人が子どものころの出来事として語った話。知人の帆船が、船頭の病気のため、炊事係のカシキと十六ほどの子どもの二人だけで出航した。口永良部島まで来ると風が強まり、湯向の沖で錨を入れたが波が高く、カシキは金比羅様に、助けてくれたら必ずお参りすると一心に願を掛けた。すると風が弱まり、無事に永田へ帰れた。カシキは船をやめて妻を迎え、この土地で暮らし向きもよくなったが、お参りに行かないまま十一年が過ぎた。ある寒い夜、たいまつで魚を突きに出て海に落ち、家にたどり着けずに凍え死んだ。願ほどきをしなかった祟りだと人々は話し合ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。