独房暮らしを語って客を降ろす
どんな伝承か
池袋や新宿では暴力団らしい客をよく乗せる。幹部風の者は言葉遣いも丁寧でチップも置いていくが、下っ端は威張って始末が悪い。刑務所を出たばかりらしい男が仲間と三人で大久保から乗り、区役所通りに入って渋滞になるといら立ち、狭い道なのに追い越せとわめいた。運転手が振り返り、終戦のとき館山で海軍航空隊の隊長をしていて千葉刑務所の独房に半年入れられたと低い声で凄むと、男は先輩でしたかと恐れ入り、三人ともすぐに降りてしまった。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。