死期を悟り身辺を整えた安昌院の父
どんな伝承か
宗像郡大島の安昌院の住持の父は、亡くなる七日前、体に何の変わりもないのに住持を呼び、自分は今年のうちに必ず死ぬ、後のことは整理しておいたから死んだら手文庫を開けよと言った。盆の支度で忙しい住持は笑って聞き流した。ところが七日目、旧村長の家の葬儀に出かける際、父はふと引き返して戸を開け、住持と母を見てにっこり笑って出ていった。途中の家にも寄ってあいさつし、葬儀で読経を終えると好きな酒にも手をつけず、数珠を繰ったまま動かなくなった。家に連れ帰って間もなく亡くなり、手箱の中は若い住持にもわかるよう万事整っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。