内庭に現れた足のない軍服の叔父
どんな伝承か
昭和十九年のこと、高知県安芸郡北川村で、前田晃男が小学四年生の頃、夜中に便所へ起きた。セメントを敷いた内庭に出ると、門の方からコツコツと靴の音がして、戦争に行っている叔父の金十郎が無言で入って来た。よく見ると軍服は着ているが足の方はスーと消えて見えない。恐ろしくて石を投げようとしても、セメントで石はなく、いつの間にか姿はかき消えた。後日、金十郎の戦死の公報が届き、自分の戦死を知らせに帰ったのだろうと家族は話し合ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。