生還を願って兵を送った暮坂峠の一本松
どんな伝承か
旧六合村の世立から渋川方面へ抜ける暮坂峠には、一本の松が立っている。昔、戦から村へ戻った武士のうち、大晦日に帰り着いた者は門松を立てられたので「宵の山本」と呼ばれ、元日にようやく着いた者は門松の代わりに松を一本植えたので「明けの山本」と呼ばれるようになったという。先の戦争が始まると、この松のそばを通って出征すれば生きて村へ戻れるという噂が誰言うとなく広まり、村人は出征兵士を峠の松まで見送って別れを告げた。しかし松の脇を通って出て行った四十人近い兵士のうち、三分の二が戦死したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。