壕を掘り斬り込みに出た石部隊
どんな伝承か
昭和十九年八月、サイパン島が全滅したことを受けて沖縄へ渡った石第三五九二部隊の兵の記録である。中頭郡西原村に入った兵たちは、来る日も来る日も壕を掘り、その骨組みに使う松を伐り倒す作業に明け暮れた。翌二十年四月一日、米軍がついに本島へ上陸する。敵の陣地のまわりには鉄線が張りめぐらされ、日本兵が触れると即座に合図の音が鳴った。これをピアノ線と呼んで日本軍は恐れた。斬り込みに出ても、戻れるのは十人のうち一人か二人。生きて帰れば「なぜ死ななかった、非国民」と将校に罵られ、次の夜もまた斬り込みへ送り出された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。