住む者に代々祟る兵営近くの屋敷
どんな伝承か
高崎市の第十五聯隊の兵営に程近い龍見町百十二番地に、噂の高い屋敷があった。閑静で瀟洒な構えで軍人や官吏の住居には適していたが、なぜか長く住み続ける者がいなかった。麻布第三聯隊付の大尉が三年前に住んだ折、その付近に異様な婦人の姿が見えたことから怪異が始まった。次の高崎聯隊付少佐の代には他の家人には見えず、五歳の子供にだけ島田髷の娘の姿が見え、夜ごとに脅かされた。さらに同聯隊付の陸軍三等軍医正庄勇之助が昨年十二月に家族を連れて移り住むと、二月頃から夜ごと異形の者が現れて悩まされ、ついに精神に異状をきたして職を辞したという。東京日日新聞による。
原典より
初めは異狀あらざりしも、去二月頃より夜……に異形の人現はれて同氏を悩まし、氏は遂に……が……に異状を呈し…—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。