名栗川の河原で指の輪に捕まる赤とんぼ
どんな伝承か
著者が暗示術の身近な例として語る体験。小春日和の穏やかな日に名栗川の河原を歩いていると、少年たちが赤とんぼを素手で捕まえていた。子どもは枯れすすきに止まったとんぼに人差し指を向け、直径八、九寸ほどの輪を空中に描きながら、そっと忍び足で近づいていく。するととんぼは指先の動きにつられて目玉をぐるぐる回し、やがて指先に気を取られて飛び立てなくなり、たやすく子どもの手に捕らえられた。著者はこれを、とんぼの心理を利用した暗示術の一種だと述べている。
原典より
私は小春日和りの麗かな日に、名栗川河畔を逍遙して居て、河原で少年達が赤とんぼを手づかみにしているのを見て感心した事があります。—— 心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年))
『心霊の神秘』は、武久勇三が一九四八年晩秋に序を書き、昭和二十四年に善隣出版社から千部限定で出した心霊現象の解説書である。近親の死に際して現れた幽霊や夢知らせなどの実例を、戦時中の出来事や知人から聞いた話、外国の研究記事から集め、頭脳の霊波による精神感応として説明を加える。話の人名はすべて仮名とことわる。後半の「第三篇 超心理学」では透視術・夢の原理・催眠術・読心術を説き、終わりに戦死の知らせの話と生命論を置く。