譲渡証書で覆った真土村の裁判
どんな伝承か
横浜裁判所では村民が勝訴し、地所はすべて持ち主に返還すべしとの判決が出た。ところが長右衛門は、名義書換の当時に村民一同へ捺印させた譲渡証書を見つけ出し、星亨を代理人として東京上等裁判所へ控訴する。この証書のために判決は覆り、九月三十日、質地取戻しの請求は成立しないと言い渡された。長右衛門はさらに小作料の滞納千六百円と訴訟入費七百円、合計二千三百余円を小田原裁判所へ請求し、償却を命じられた村民は途方に暮れる。示談も拒まれ、伊東平兵衛ら三人が司法省へ駆込訴訟のため上京する一方、村では冠彌右衛門や伊藤佐治兵衛らが襲撃の手配を始めた。
原典より
不都合な證據書類、讓渡證書のために裁判は長右衛門の勝訴となつた。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。