大工音五郎に頼まれた木砲二門
どんな伝承か
恵比寿屋で遊んだ翌朝、四之宮村八幡の仕事小屋で弟子と働いていた大工音五郎のもとへ、真土村の農夫伊藤佐治兵衛と形上所左衛門が訪ねてきた。裏の畑と竹藪の間で、佐治兵衛は、彰義隊のころ大砲方として木砲を造ったという音五郎に、木砲を二門造ってほしいと頼んだ。土地を奪われ、裁判費用と借金で村方六十軒は乞食になるほかないので、長右衛門一家を討つのだという。死罪になれば妻子が困ると渋る音五郎に、二人は二十年間扶持を出すと約束し、音五郎は味方になると決めた。
原典より
『それぢや味方をしよう、』と、音五郎は決然として云つた。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。