一家七人が屠られた長右衛門宅
どんな伝承か
屋敷に踏み込んだ音五郎らは、命乞いをする長右衛門の父良助とその妻、傍らで泣き伏す女の三人を殺し、長右衛門を捜した。奥座敷から下りてきた長右衛門は生垣を越えて逃げようとしたが、音五郎に突き飛ばされて畑の溝際に手をつき、背後から組みつかれた。長右衛門の短刀を肩に受けながら、音五郎は佐五左衛門が差し出した脇差で一突きにした。長右衛門は声も立てずに死に、その指には金の指輪が光っていた。弟の元次郎も殺され、妻フミは一月後に死亡し、生き残ったのは道次郎と少年壽之丞だけだった。
原典より
情の強い長右衛門は何も云はずに死んで行つた。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。