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金比羅の紋が浮いた蟹を食べた男の死

所在地香川県綾歌郡宇多津町(石船)
年代大正13年夏
登場谷やん、大蟹を食べて死んだ船乗り
出典日本怪談実話

どんな伝承か

谷やんは、金比羅様のお使いと言い伝えられる大蟹を捕えて帰り、女房が「逃がしておやり」と止めるのも聞かず、自分で火を起こして釜にかけた。谷やんにとっては蟹の味よりも、それを食って迷信家たちを驚かすことが愉快だったのである。やがて女房が勝手元で叫び声をあげた。茹で上がって赤くなった蟹の甲羅には、直径一寸ほどの円い輪の中に、黄色い文字のようなものが微かに浮き出ていた。見ようによっては「金」の字――金比羅様の御紋のようであった。女房は「もったいない」と青ざめたが、谷やんは何かの傷痕だろうと思いなおし、女房を神経病みだとあざ笑った。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))

『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。

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