誰もいないのに鳴る杉本神社の太鼓
どんな伝承か
友人の北島好孝は、高知市から三里ほど西になった伊野という町の生まれである。その伊野には大黒様で通っている杉本神社があり、著者も少年の頃に参詣したものだという。杉本神社の拝殿には大きな太鼓が据えてあった。北島が少年の時、悪戯仲間と境内へ入って戦争ごっこや鬼ごっこをして騒いでいると、その太鼓が気味悪く鳴り出した。初めは神官か誰かが鳴らしているのだろうと思って傍へ行ってみたが、神官も誰もいない。それも一度や二度ではなく、子供らが行って騒いでいると時どき鳴るのであった。とても怖かった、鳴り出すと皆が逃げたと北島は語った。
原典より
* 線香の匂い (321)* 雨乞祭の怪 (323)* 蛇の兜 (324)* 龍神 (325)* 四国遍路の奇蹟 (326)* 如来像の怒り (328)* 屋根の仏像 (330)* 七福神…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。