掘り出した埴輪の祟りと埋め戻し
どんな伝承か
昭和九年六月、遠州小笠郡大坂村字法地の大坂村信用組合理事大石寅吉が、同村内の所有山林を開墾したところ、無数の古器物が出た。同郡平田村の考古学研究家西郷藤作に鑑定させると千五百年前の埴輪だという。県に報告したので、その十五日には東京帝室博物館歴史科鑑査官の鈴木勇が出張して正式に鑑定した。ところがその掘り出しには怪しい挿話がある。大石が埴輪を掘り出したところ、夫人が突然病気になって重態に陥った。そこで開墾を中止し、埴輪を同じ場所に埋めてその上に祠を建て、神社として祀る準備に着手すると、夫人の病気はけろりと癒った。村の者は恐怖したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。