不動岩洞穴に残ったヒニンの穴居
どんな伝承か
民俗研究者の筒井功は、大分県竹田市や豊後大野市あたりに「ヒニン」と呼ばれる非定住民がおり、昭和四十年ごろまで一部が自然の岩窟や岩陰で暮らしていて、彼らが日本における最後の穴居集団だった可能性が高いと記す。平成二十三年九月、筒井は彼らの足跡を求めて竹田市の稲葉川沿いを歩いた。稲葉川はJR竹田駅の南西一キロほどで大きく蛇行し、その底にあたる淵を通称「アシカタブチ(足形淵)」と呼んだ。かつては深い淵だったが舗装道路が敷かれて訪ねたときには消えており、この一帯に何十人ものヒニンが暮らしていたことが聞取りと資料で確かめられていた。
原典より
「乞食岩」という地名もある木賃宿は田舎にも多かった第6章 悲劇を伝える二つの小地名谷川岳南麓に暮らして狩猟罠「オス」を仕掛けていたころ誤ってオスに入り圧死した旅芸人自ら仕掛けたオスに敷かれて死ぬ「円次さんのことは聞いてい…—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。