魚津の海に立つ城郭の蜃気楼
どんな伝承か
越中の魚津では、毎年三月末から四月にかけて、風がなく海上に霞のかかった穏やかな日に蜃気楼が現れる。年に一、二度、多い年には三、四度で、海上に煙のように立ち現れ、やがて楼閣や城郭のように見え、人馬の往来まではっきり見えるという。宮島式部太夫という社人が魚津で見たときは、はじめ幕を引いたようだったのが、しばらくして矢倉や狭間のある城郭となり、さらに松原や天橋立のような景色に変わり、夕暮れに風が出るとしだいに消えたと『東遊記』は記す。鳥山石燕は、大蛤が気を吐いて楼閣を描くのが蜃気楼だとして絵にしている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。