中津の道で女が渡した馬の糞の饅頭
どんな伝承か
昔、多和に住む男が、今にも降り出しそうな空の下、中津のあたりを通って家へ帰ろうとしていた。すると木の蔭から女がひとり出てきて、自分の法事の帰りだから一緒に行かないかと声をかける。連れ立って歩くうち、女は法事の供え物の饅頭だと言って差し出した。男は一つをその場で食べ、もう一つは子供に持ち帰ろうと懐へ入れた。途中で女と別れ、家に着いてから懐の饅頭を取り出してみると、それは馬の糞だったという。狸に化かされたのだと語り伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか)
『ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌』は、武田明・高橋克夫らが香川県長尾町の前山地区の暮らしを記した民俗誌である。祭りの項に続く「口承文芸」の項を昔話と伝説・世間話に分け、昔話は星越・大多和・譲りはの古老の語りを話者の名を添えて土地の言葉のまま書きとめる。伝説と世間話には中津・大多和・ゆずりはなどの天狗石や川女郎、首切れ馬、桂洞法印の化物寺の話を収め、項の末尾に執筆者の名を記す。