疝気がうつると逃げた江戸の湯治客
どんな伝承か
湯野上温泉は昔から不老長寿回生の名湯と謳われ、疝気や痰飲、金瘡などに霊効があると宣伝されていた。明治の初めごろ、はるばる江戸から病を治したくてこの湯を訪ねてきた者がいた。ある日、一斗樽のような大きなふぐりをぶらさげて湯につかっている人がいたので、やはり疝気治しにこの湯に来たのかと問うと、いや自分はここの生まれだという返事だった。あきれた江戸の浴客は、宣伝に乗った、うつるうつるとわめきながら疝気を頭痛に病み、青くなって湯治をやめ、早々に旅装を整えて立ち去ったという。
原典より
昔から不老長寿回生の名湯と謳われている湯野上温泉は、歴史の本にもまた疝気・痰飲・積虫並びに金瘡・温瘡に霊効ありと宣伝されている。—— 下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史)
『下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説』は、会津の下郷町の町史民俗編のうち、町内の伝説を集めた第二節である。鏡沼の大蛇や二岐山のダイタンボウ、狼に食われた祖母、湯野上温泉猿湯の由来、高倉宮以仁王と桜木姫・紅梅御前の落人伝説、伊達政宗の戦の悲話、小野の長者と小野観音の金の鰐口などを収める。伝説を自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分け、各話に地名や供養塔・墓・文化財の現状を書き添えている。