娘の死で殺生をやめた小野の長者
どんな伝承か
今から一〇〇〇年あまりも前のころ、小野の村に猿丸太夫という長者が住んでいた。そのころは小野岳や近くの山々に鹿や猿など多くの獣が生息しており、長者はそれらを狩って毛皮をなめし、遠く奈良や京都まで売りに行っては富を増やしていた。長者にはひとりの娘があり、とてもやさしい心の持ち主で、次々に獣が殺されるのを日ごろから悲しみ、どうにかして父の殺生をやめさせようと考えていた。ある時、娘は父がはいだ鹿の毛皮をかぶって山道をとぼとぼと歩き、わざと父の矢を受けた。ひとり娘を死なせた長者はそれ以来きっぱり狩りをやめ、小野岳の山頂に小さな庵を建てて娘の冥福を祈り続けたという。
原典より
今から一、○○○年あまりも前のころ、小野の村に猿丸太夫という長者が住んでいた。—— 下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史)
『下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説』は、会津の下郷町の町史民俗編のうち、町内の伝説を集めた第二節である。鏡沼の大蛇や二岐山のダイタンボウ、狼に食われた祖母、湯野上温泉猿湯の由来、高倉宮以仁王と桜木姫・紅梅御前の落人伝説、伊達政宗の戦の悲話、小野の長者と小野観音の金の鰐口などを収める。伝説を自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分け、各話に地名や供養塔・墓・文化財の現状を書き添えている。