豆腐を見舞った菎蒻の嘆き
どんな伝承か
或る日、豆腐が豆腐棚から落ちて怪我をした。それを聞いた菎蒻は見舞ってやろうと、ペッタリペッタリと歩いて行き、棚から落ちたそうだがどこも痛みはないかと慰めた。すると豆腐は、お前は丈夫でよいなあと言った。菎蒻は首を振って、なに、よいことなどありはしない、毎晩毎晩、今夜食おう菎蒻食おうと言われているので、生きた心地もないのだと答えたという。豆腐と菎蒻を人に見立て、土地の言葉遣いのまま語られる短い笑話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。