桃林寺の仁王に詫びる酔っぱらい
どんな伝承か
四ヵ村の医者の牧志が、新川部落へ往診した帰りの午前一時ごろ、急な雨に降られて、道端の南海山桃林寺の山門で雨宿りをしていた。古い禅寺の山門の両脇には、柵に囲まれた大きな仁王像が立っている。そこへ近くの料亭で酔いつぶれた職人ふうの男がふらふらとやってきて、仁王像に向かって小便をしながら、回らない舌で仁王に許しを乞うた。牧志が大声で一喝すると、男は悲鳴をあげて腰を抜かし、雨の中を四つんばいで逃げていった。仁王に叱られたと思い込んだらしい。
原典より
その男は、仁王におこられたと思ったらしい。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。