宮良の松並木で赤子を抱く先妻の幽霊
どんな伝承か
石垣島白保村の豪農山里亀吉は、生後三か月の赤ん坊が急に引きつけて息絶えたため、裸馬で四ヵ村の医者を呼びに走った。宮良村の入口の松並木にさしかかると馬が棒立ちになって進まず、頭上の松の枝に赤ん坊を抱いた中年の女がまたがっていた。女は三か月前に死んだ上間の妻で、夫が約束を破って再婚し法要も怠るのが口惜しいと訴え、亀吉の赤ん坊を気絶させたのは自分だと明かす。上間の屋敷の四つ角の祈禱札を抜いてくれと頼まれ、亀吉が抜くと赤ん坊は元気になり、その夜、上間は急死した。
原典より
亀吉は、思わず頭上の松の枝を仰ぐと、そこに赤ん坊を抱いている中年の女の姿をみた。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。