二匹を狙って爪を抜いた鷹
どんな伝承か
この地方には「慾の濃い鷹爪ぬける」という諺がある。鳥の頭ともいうべき大鳥が木の股に挟まって抜けず、鳥たちが羽を頻りに引っ張ったので身体が赤剥けになった。そこへ水潜りが出てきて、鳥たちを左右の枝に並ばせ、重みで枝を折って大鳥を助け、皆の羽を一枚ずつ抜いて大鳥に付けた。祝いの馳走にと水潜りは山へ飛び、猪の耳に入って暴れ一匹を仕留めた。鷹は二匹取ると言って二頭の背に同時に爪を立てたため、引き裂かれて足を折り、爪を抜かれてしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。