坑を落とした黄金の牛と生き残った男
どんな伝承か
奥羽の鉱山地方に広く流布する黄金牛の口碑を報告した一篇である。昔、陸前国気仙郡のある所に小松長者という人がいて、正月の夢に、自分の領地のうちの山に黄金の牛が埋まっているとお告げを受けた。山を掘ると黄金が現れ、鉱夫を督して脈を掘り進み、三年目の大晦日に牛の形をした親金に掘り当てた。元朝に錦の手綱を角へ結んで曳くと角が折れ、次に首へ綱を結んで曳くと、牛が二、三歩動いたところで坑が落ち、鉱夫七十五人が惨死した。炊事男のウソトキだけは坑口で呼ぶ声に誘われて外へ出ており、ただ一人助かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。