沼の主となった母が残した眼玉
どんな伝承か
ある山里に仲の良い夫婦がいたが、子がないのを嘆いていた。やがて妻が風邪がもとで死に、夫が野辺の送りを済ませた後、女が現れて夫婦となり、懐妊した。女は、産の間は決して産室を覗かないでくれと頼んだ。七日の後、女は美しい男の子を抱いて出て来て、もう別れねばならないと言い、自分の眼玉を残して去った。父は坊太郎と名づけ、その眼玉をしゃぶらせて育てた。眼玉が尽きると、父は沼のほとりの峯寺に大鐘を納め、明け六つ暮れ六つに撞いて時を知らせたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。