二本足で歩いて元へ戻った蛙
どんな伝承か
雫石の黒沢川のような所に一匹の蛙が住んでいた。或る時、馬喰が駒に乗り、盛岡街道のような道をよい声で馬方節を歌いながら盛岡の方へ行った。日暮れ方、大森の麓のあたりで蛙も真似て鳴いてみせると、馬喰は驚いて立ち止まり、これから上方参りに行くが行く気はないかと声をかけて通り過ぎた。蛙は跳ねて後を追い、疲れると人のように二本足で立って歩いた。やがて見覚えのある村屋が見えて来て、休んでみるとそこは自分が元いた黒沢川であった。立つと目が後ろを向くので来た道を逆に戻っていたのだと気づき、上方参りをやめたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。