別人を装って熊を欺いた兎
どんな伝承か
昔、或る所に熊と兎がおり、二人で薪取りに山へ行った。兎はずるく、疲れたと言っては薪を熊に持たせ、しまいには自分まで背負わせた。兎は熊の背で火打石を切り、火を吹き、鳥の声だと言いくるめて熊の背に火をつけて逃げた。次は藤蔓で手足を縛って斜面を転がらせ、次は蓼味噌が傷の妙薬だと言って傷口に塗りつけた。そのたび兎は前山の兎、藤山の兎、蓼山の兎と別人のふりをして熊を欺く。最後は杉板の船と土の船を作って川へ乗り出し、崩れる土船の熊を竿で深い淵へ突き落として殺したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。