泣き止んだ子に落胆した狼
どんな伝承か
或る雨の降る夜、山の狼が腹を空かせて、おう、おうと大声で啼きながら山から下りて来た。ちょうどその時、百姓家の子供が泣き出したので、母親は、そんなに泣けばあの狼にやってしまうぞと言った。狼はその家の壁の外を通りかかってこれを聞き、よい事を聞いた、あの子供を食えると思って喜んだ。ところが家の中の子供の泣き声がぱたりと止み、母親が、こんなによい子を誰が狼などにやるものかと言ったので、狼は落胆して行ってしまったという。著者が紫波郡昔話の資料から採録した短い一話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。