放した魚が女房になった漁夫
どんな伝承か
或る所に正直な漁夫があり、毎日網や釣で雑魚を取って暮らし、余分に取れた魚は川へ放してやるほどで、貧しく独り身であった。或る日、若く美しい女が訪ねて来て置いてくれと頼み、断っても離れないので女房にした。以来朝夕の味噌汁が妙に旨く、訳を尋ねても笑うばかりである。或る日、男は町へ行くと偽って梁の上に隠れ、女房が摺った味噌に自分の尻を浸すのを見た。問い詰められた女房は、自分は人ではない、以前に放してもらった魚だと明かし、翌日淵の岩の上で漆塗りの手箱を渡して水中へ消えた。箱には金銀の宝が満ちていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。