頬を撫でた赤子の手と山婆
どんな伝承か
或る所に亭主と女房があった。亭主が町へ用足しに出かけると、身重の女房が一人で留守をしていた。そのあとへ山婆が来て、腹の大きい女房を取って食った。夕方帰った亭主が声をかけても返事がない。暗い家に入り、竈で火打道具から火を起こしてふうふうと吹くと、テデなやアと言って頬を擦るものがある。何度も同じことが起こるので辺りを見ると、赤子の左手が肘からもげて転がっていた。血の跡をたどって寝床を見ると女房は食われて血だらけであり、常居の棚の上に口を血で染めた山婆がいた。亭主はいきなり木割で山婆を斬り殺した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。