他人の体で蘇生った気仙の若者
どんな伝承か
気仙の或る村の暮らし向きのよい家の息子が死に、墓場で葬礼の鉢鉦を鳴らした時、棺の中で蘇生って呻り声を出した。喜んで家に連れ帰ったが、息子は数日前まで自分が暮らした家のことを何も知らず、自分の家は気仙の某という村の某家だと言って帰りたがった。問い合わせると、その家でも二、三日前に若者が死んで火葬を済ませていた。訪ねて来た家の者を息子は懐かしがり、子や妻の年、仏壇の下の箪笥にある書付まで細かに語った。火葬されたため元の体では戻れず、土葬された者の体を借りて蘇生ったのだという。両家は相談し、息子は火葬された者の家へ引き取られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。