逆さに嵌めた眼玉と名医の運
どんな伝承か
或る所に正直者がいた。運が向くようにと清水の観音に願をかけると、満願の前夜、明朝夜が明けたら御堂の高縁から飛び下りてみよと夢枕に告げがあった。翌朝そのとおり飛び下りると、拍子に眼玉が抜け落ちた。急いで拾って嵌め込んだが、反対に入れてしまい、腹の中の五臓六腑が見えるようになって、名高い医者となり大いに儲けた。それを見聞きした隣家の怠け者も同じ観音に願をかけ、告げのとおり夜中に起きて飛び下りると眼玉が抜けた。ところが誤って橡の実を嵌め込んでしまい、医者になるどころか、一生座頭ノ坊になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。