語らぬ座頭と四杯飯の宿語り
どんな伝承か
或る時、座頭ノ坊様が来て泊まった。その家では珍しい語り物を聴こうと近所の人々を呼び寄せ、坊様にはわざわざ餅を搗いて馳走した。夜が更けて何か語れと言っても語り出さず、催促されると坊様は、ああ腹が重い、小豆餅一杯二杯三杯と唱えた。呆れた嬶様が早く語れと言うと、また小豆餅三四杯五六杯食い申し候えば腹が重いと声を張り上げ、宿語りは三段目でも語るなというから後は語れぬと言った。翌朝も起きず、飯を一杯食ってはハイ、二杯三杯と数え、四杯目の椀を突き出した。嬶様が座頭の四杯飯を諫めると、坊様は平然と言い返したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。