天に伸びた桃の木と雨降らせ役
どんな伝承か
或る所に一人の男がいた。桃の苗木を一本買って来て植え、その夜寝て翌朝起きてみると、一夜のうちに桃の木は天の雲を突き抜けて伸びていた。男はその木を伝って天へ登った。雲の上では雷様が大あくびをして起き上がり、八つ太鼓をドンドコと打ち鳴らして出て来て、早くこの桶の底を抜いて水撒きをしてくれと、雨降らせ役を頼んだ。男が桶の底を抜いて下界へ水をぶちまけると、榧を干していた爺婆たちが神立雨だと大騒ぎを始めた。男はそれが面白くて見惚れ、雲を踏み外して落ち、桑の木の枝に引っ懸かった。だから雷の鳴るときは桑の小枝を軒に挿すのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。