樽の音で酒を飲み分ける約束
どんな伝承か
昔、或る所に新八と五平という飲み友達がいた。樽酒を買って来て、新八がこの酒を名指しで飲もうではないかと言う。どうするのかと五平が尋ねると、樽から酒を注ぐとき、シンパツと鳴ったら自分が飲み、五平と鳴ったらお前が飲むのだと言った。五平も面白がって賛成した。まず新八が樽を持って盃に注ぐと、酒は勢いよくシンパシンパと音を立てて出た。いつまでもシンパシンパと鳴るので、新八は樽の酒をあらかた飲んでしまった。ほとんど底になった頃にやっとゴヘゴヘと鳴ったので、さあ今度はそちらの番だと盃を渡したが、五平の分は盃に半分ほどの泡ばかりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。