痒みを堪えかねた三人の言い訳
どんな伝承か
或る所に、目腐れ、白雲たかり、虱たかりという三人の朋輩がいた。目腐れは眼をこする癖、白雲たかりは頭を掻く癖、虱たかりは背中を揺する癖があり、いつも人に笑われていた。そこで三人は相談して、これから一切その癖をやらないと約束した。黙って炉に当たっていたが、時が経つにつれて目は焼け爛れるように痒くなり、頭は鳴って眩暈がしそうになり、背中はむず痒くて堪えられなくなった。堪りかねた虱たかりが、向かい山に鹿が通ると言って体を揺すり、目腐れは弓を引く格好で目をこすり、白雲頭も鹿が逃げると言って思う存分頭を掻いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。