位牌から飛ぶ亡妻の顔と胡桃餅
どんな伝承か
ごく仲のよい夫婦があった。そのうちに妻が病んで死んだ。死ぬとき妻は、これほどお前を思って死ぬのだから、どうか後妻を貰わないでくれと遺言した。ところが夫は間もなく別の女を娶った。それでもいつもの癖で仏壇の前へ行って拝むと、位牌から亡妻の顔が飛んで来て男の額にぴたりと張り付き、離れない。夫はひどく困って外へも出られずにいたが、亡妻が胡桃餅を大変好きだったことをふと思い出し、餅を搗いて胡桃を摺鉢に入れてがらがらと摺りながら額を覗けると、案の定、顔は摺鉢の中にぼたりと落ちたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。