雫石の柳に抱かれた娘
どんな伝承か
昔、雫石の里に美しい娘がいた。毎日、家の前の北上川へ出て、勢いよく伸びた柳の木の下で洗濯をしていた。或る時、いつものように洗濯に出たまま行方が分からなくなり、家の者も村人も方々を探したが見つからない。ところが二三日経ってから、娘がその柳の木の幹に、たくさんの枝で絡め取られてしっかりと抱かれているのを見つけた。娘は助け出されて家に戻ったが、その後は長くぶらぶら病いに憑かれて青い顔をしていた。快くなってから、洗濯をしていると見たことのない美男が来て抱きついて放さず、そのまま気が遠くなったと語った。その後、柳の木は自然に枯れ死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。