粗末にされた履物の化物
どんな伝承か
昔、或る所にたいそう履物を粗末にする家があった。或る晩、下女が独りでいると、外で「カラリン、コロリン、カンコロリン。まなぐ三ツに歯二ん枚」と唄う声がした。次の晩も、その次の晩も、毎晩同じ刻限に化物が出る。恐ろしくなった下女が奥さんに話すと、奥さんは自分も聞かねばならぬと言って同じ部屋に寝た。やはり同じ声がしたので、翌晩は正体を見ようと二人で待ち構え、戸の隙間からそっと覗いた。すると履物の化物が、いつも履物を投げ捨てて置く物置の隅へ入って行った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。