頭巾を被せた地蔵が曳いてきた木
どんな伝承か
貧乏な爺様と婆様がいた。大晦日が来ても魚も米も味噌もなく、一年働いて貯めた三百文ばかりの銭で歳取り仕度をしようと爺様は町へ出た。地蔵堂のところまで行くと御堂はひどく壊れ、小さな地蔵様も大きな地蔵様も雪を吹きつけられて真白になっていた。爺様は勿体ないと思い、米味噌を買う銭で赤い小切れを買って戻り、小さな地蔵から順に頭巾を被せ、足りなくなった大きな地蔵には自分の笠と蓑を脱いで着せて、手ぶらで帰った。夜半、大木を曳く音が近づき、地蔵たちが大きな木を玄関先に置いて行った。斧で割ると中は空洞で金銀がざくざくと出て、爺婆は元朝から俄か長者になった。
原典より
大晦日が来たけれども、魚も米も味噌もなんにもない。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。