屋敷から出て行った福の神の牛
どんな伝承か
煙山村大字煙山に堤という家がある。この家の先祖の與平治という人の時代には、「西根山は崩れるか、堤の與平治はカマドを返すか」といわれたほどの豪家であった。ところが時代が移るにつれ、この世盛りの堤家も次第に左前になっていった。すると邸の後ろの土堤から赤牛、斑牛、黒牛などがぞろぞろと毎日のように出て、どこかへ行ってしまうようになった。近所近隣の人々にもその牛はよく見えたという。それからは目に見えて貧乏になった。牛は堤家の福の神で、その福の神が他人の目に付くようになると、その家の運が傾くのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。