天狗が金を降らせた話
どんな伝承か
天狗さんというのがいた。お母さんにだけ育てられた子供だったが、急にいなくなり、やがて立派な青年になって帰って来て、人のできないようなことをやるようになった。このあたりで現金収入を得るには炭を焼くか機を織るか、でなければ馬の背で荷を運ぶかであった。天狗さんが駄賃つけに馬を引いて行ったとき、お金を持っていかなかった。いつも寄る須走の婆さんの食堂で食べ、財布を忘れたので明日また来ると言うと、婆さんはえらく怒り、たむろしていた荷つけの連中にもひどく叱られた。天狗は店を出て天に向かい「お金を貸してくれ」と言うと、天からお金が降ってきたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告)
『向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異』は、民俗調査報告の第九号・第十号にあたる向原の民俗誌の上巻から、「IX 口承文芸」の章を収めたものである。昭和五十六年から五十七年にかけて向原の話者から聞き書きした昔話十一話、伝説二十四話、天狗や狐、河童、ヒトダマをめぐる世間話二十七話のほか、富士山にまつわる諺と方言を収める。各節の初めに題名・分類・話者の生年・採集日を記した分類表を置き、話は土地の言葉のまま書き起こして話者名を添える。